TIME誌を使ってネイティブ流の英語表現を学ぼう

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ステート・フェアの食事とその禁断の魅力(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号のステート・フェアに関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

この記事を読むと以下のことが分かるようになります。

 

問題

①「彼は真面目くさった顔で面白いことを言った」を2語で英訳すると?

 

②「それは筆舌に尽くしがたい」を3語で英訳すると?

 

③ Fair enoughの意味は何でしょうか?

 

 

記事の背景

米国の各州で毎年行われるステート・フェアは、もともと土地の農産物・畜産物の品評会として19世紀にスタートしました。

過去には陰で違法薬物の取引が行われたり、いかがわしい見世物が行われたりするなど、少し危険な匂いのするイベントでしたが、現在のステート・フェアで最も背徳的で人気を集めるものは、ビール揚げ、マッシュポテトの串揚げ、バターボール揚げといった奇抜で革新的なカロリー過多の食べ物の数々です。

 

 

筆舌に尽くしがたい

「あまりにも普通でなく言葉で表現できない」ということを、たった3語の英語で言えます。以下の抜粋を見て見ましょう。

Chicken-fried bacon. Hot-beef sundae. Cookie fries. Deep-fried butter balls. Python kebabs. Deep-fried mashed potatoes on a stick. Fried beer.

To say it beggars description is to tell a lie. The name alone can do that work.

チキンフライドベーコン、ホットビーフサンデー、クッキーフライ、バターボール揚げ、大蛇ケバブ、マッシュポテトの串揚げ、揚げビール。

筆舌に尽くしがたいと言えば嘘になるだろう。名前自体は確かに機能している。

名詞のbeggarは「乞食、物乞い」の意味ですが、ここでは動詞で「使い尽くして足りなくなる」という意味で使っています。なので、It beggars descriptionで、描写を使い尽くす、つまり、言葉では表現できないという意味になります。この表現を最初に使ったのはシェイクスピアだと言われています。

バリエーションとして、It beggars belief(あまりにも普通ではなく、とても信用できない)というのもあります。

 

 

Fair enough

海外ドラマで2人の人物が色々と言いあった後に一方が弁解をして、弁解を聞いた相手が「Fair enough」と言って場が収まるようなシーンを見たことがないでしょうか? その意味について、以下の文章を使って学びましょう。

Fair enough: fired beer requires elaboration. Crowned “most creative” food for the state fair of Texas in 2010, fried beer sloshes inside a “pocket” that resembles a ravioli.

揚げビールには精巧な仕掛けが必要・・・まあいいでしょう。2010年のテキサスのステート・フェアで「最もクリエイティブな」一品との称号を授けられた揚げビールは、ラビオリのように「ポケット」の中で液体がポチャポチャと音を立てます。

Fair enoughは場面によってニュアンスが変わりますが、「(直ちには同意できないような事柄について)あなたの言っていることに私は納得しますよ」という意思を伝える言葉です。日本語で言うと、「まあいいでしょう」「そうかもしれませんね」「なるほどね」といった感じでしょうか。

ここでは、揚げビールという奇妙奇天烈な料理について、発明者が「これを実現するには精巧な仕掛けが必要なんですよ、1種のアートなんですよ」と反論することを想定して、「まあいいでしょう」と筆者が一人芝居のように納得を示している様子を、Fair enoughで表現している訳です。普通は会話で使う表現をうまく文章に取り入れているところが面白いですね。

 

ちなみに、揚げビールの食感は「ぐにょシュワ~」って感じらしいです。興味を持たれた方のため、その作り方を説明したyoutubeの動画を貼っておきます。

 

 

彼は真面目くさった顔で面白いことを言った

 「彼は真面目くさった顔で面白いことを言った」は、「He + 動詞 1語」で表現できていまいます。その単語について以下の抜粋で学びましょう。

The loneliest stand at my last state fair offered “fruit on a stick.”

A passerby read the sign aloud to his companion, paused and, in a deadpan that was itself delicious, asked: “Do you remember fruit?”

私が最後に行ったステート・フェアで最も閑散としていた売り場では、棒付きのフルーツを提供していた。1人の通りすがりの人が、連れの人に看板を読み上げて、少し考えた様子で止まったあと、神妙な顔で(そこが面白いのだが)尋ねた。「フルーツって何だっけ?」

deadpanは名詞で「表情の無い顔、真面目な顔」、形容詞で「真面目くさった、無関心ぶった」、動詞で「真面目くさった顔で面白いことを言う」という意味になります。

なので、「彼は真面目くさった顔で面白いことを言った」は、「He deadpanned.」の2語で表現できます。(上の抜粋では名詞として使っていますが、少し説明的な文章で同じことを表現しています。)

panは日本語でもフライパンと言うように平鍋を意味する名詞ですが、スラングでは顔を意味します。dead(生気の無い)+ pan(顔)でdeadpan(表情のない顔)、そのままですね。

 

もう一つ注目したい単語はdeliciousです。

「たいへん風味のよい」という意味のdeliciousですが、(ユーモアなどが)非常に面白いということを表現する時にも使います。Deliciousの語源はラテン語deliciae(喜び)で、英語ではdelightに相当します。なので、美味しいという意味でdeliciousを使う場合も、それは主観的な喜びの感想であって、客観的に味を述べたい場合には「It tastes good」と言います。(形容詞であれば tasty か good-tasting) 

 

 

おわりに

揚げバターボールなんて聞いただけで胃もたれしそうですね。

ちなみに、米国の成人の平均体重は81.9kg(世界3位)だそうです。(日本は59.0kgで137位。wikipedia調べ)。 ステート・フェアの超高カロリーな食べ物の数々は共産主義者の陰謀だと言う政治家もいるそうですが、きっと単に面白くてやっているだけでしょうね(笑)。