TIME誌を使ってネイティブ流の英語表現を学ぼう

超一流の記者が書く英文記事からピカリと光る表現をピックアップ。さらに世界が今注目する話題について分かりやすくまとめます。

FOXCONNの会長テリー・ゴウが台湾総統選に出馬の意向(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号の台湾総統選に関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

この記事を読むと以下のことが分かるようになります。

問題

① a crisp sheet of paperとはどういう意味でしょう?

<ヒント>a sheet of paperで「一枚の紙」なので、crispの意味が問題です。

 

②pull off a dealとはどういう意味でしょう?

 

③ 次の英文はどういう意味でしょう?

Police officers were primed to easily recognize and arrest the wanted person. 

<ヒント>動詞のprimeの意味がポイントです。 

 

 

記事の背景

中国と米国の2大大国が貿易戦争を過熱させる中で、両国のトップと付き合いのあるFOXCONNの会長テリー・ゴウが、自分が総統になることで台湾は両国の間を取り持つサプライチェーンになって大きな利益を上げることができると話しています。

FOXCONNはパソコンやスマートフォンのパーツを生産する企業グループですが、長時間労働、過労死、児童労働などが理由で米国で不買運動が起きたこともあるなど、悪いイメージも根強くあります。また、中国に接近することは危険だと考える台湾人は非常に多く、テリー・ゴウの提案が台湾で受け入れられるかは未知数です。

 

 

動詞のprimeの意味

アマゾンプライム、あるいはプライムミニスター(総理大臣)など馴染みのある単語ですが、動詞だとどういう意味になるでしょう?

下の記事からの抜粋を見て見ましょう。テリー・ゴウが大統領出馬に関するテレビのインタビューを受ける時、いつも秘書が足元にかがんでいるのですが、その秘書が何をやっているのかを説明した文章です。

If he strays off message, they're primed to steer the presidential contender back on course by giving his pant legs a quick tug.

もし総統候補(テリーゴウ)がメッセージから脱線した場合には、秘書たちは彼のズボンの裾を素早く引っ張ることで話題を元に戻すように誘導することを事前に仕込まれています。

動詞のprimeの意味は、誰かに事前に情報を与えておいて、ある状況・ある業務の準備をさせるという意味です。

たとえば以下のような文章に使うことができます。

Police officers were primed to easily recognize and arrest the wanted person.

(警察官はその指名手配犯をすぐに認識して逮捕できるように事前に情報が与えられていた)

 では、なぜprimeに「準備する」というニュアンスが含まれるのでしょうか? 

 primeの本来の意味はFirst (第一の)ですが、そこから「何よりも第一にやること」という意味が出てきて、準備するという意味で使われるようになったのだと思われます。

 

 

 a crisp sheet of paper

チキンクリスプのクリスプは、カリカリという意味ですよね。

ではcrisp sheet of paperはカリカリの紙でしょうか?

カリカリという意味は、crispという単語の音のイメージから来ています。なので、似たような音をcrispから連想できないでしょうか? 紙を表現するのに使えそうな音です。

He sketches the plan on a crisp sheet of paper.

彼は真っ新の紙に新しい計画を描いている。

パリパリの真っ新な紙ということですね。折れ目の無いというニュアンスです。

新しい紙と言う時に、是非new paperの代わりに使ってみてください。

 

 

Pull off

It's also not clear how Gou as President could pull off a deal with China.

ゴウがどうやって総統として中国との取引を見事成功させることができるのかも不明確です。

pull offは(見事)成功させるの意味です。pullは引っ張るという意味なので、pull offで何かを勢いよく引き抜くイメージですね。succeedよりも、勢いよく見事に成功するといった感じです。

ただし、フォーマルな表現ではないので堅い文章を書くときには使わないようにしましょう。

 

regardとperceiveの違い

regard~asもperceive~asも、「~とみなす、~と考える」と日本語に訳すことができますが、ニュアンスは違います。(ほぼ同じ意味で使う場合もあるとは思いますが)

以下の記事の抜粋を見て見ましょう。

The controversial extradition bill that provoked unrest in semiautonomous Hong Kong has been perceived by many Taiwanese as a warning against getting too close to the mainland, boosting Tsai in the polls.

自治的な香港で抗議を呼び起こした賛否両論の容疑者引き渡し条例は、多くの台湾人に、中国本土へ接近しすぎることの危険の警告として受け取られ世論調査蔡英文(現職)の人気を加速させています。

perceiveは、「認識する、理解する、解釈する」といった意味を持ちますが、特に「視覚的に認識」をする場合に好んで使われる単語です。

perceive ~ asは、特定の見方で何かを解釈するという意味です。上記の「視覚的に」というニュアンスがつきまとうので、あまり深く考えた末の解釈ではなく、素直に受け取る、素直に自然に解釈をしている場合に使われる場合が多いと思います。

一方で、regard ~ asあるいはconsider~asの方は、しっかり考えて評価し結論を出しているイメージがあります。

上記の抜粋記事でも、香港で中国寄りの行政長官(キャリーラム)を選んだ結果、中国本土への容疑者引き渡し条例が通されそうになったという事件を、台湾の人が中国への接近の危険性として受け止めるというのは素直な受け取り方ですので、ここではperceiveという単語がしっくりきます。

私は仕事柄、日本人の書く英語をよく目にするのですが、日本人はregard~asやconsider~asを多用する傾向にある気がします。単語の選択肢を増やすことで、より文脈に合った自然な英語を書けるようになるのではないかと思い、この文章をピックアップしてみました。

 

 

おわりに

1つ1つ の英単語のニュアンスをつかむには、例文や語源も含めて英英辞書を隅から隅まで読むのが一番の近道だと私は考えています。語源もニュアンスをつかむのに役立つ場合があるので、辞書の一番下まで確認すると思わぬ発見があるかもしれませんよ。