TIME誌を使ってネイティブ流の英語表現を学ぼう

超一流の記者が書く英文記事からピカリと光る表現をピックアップ。さらに世界が今注目する話題について分かりやすくまとめます。

ハリウッド映画に新たな流れ。アジア系アメリカ人主演の映画が次々と公開(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号のハリウッド映画の新しい兆候に関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

 

クイズ

① pigeonhole(ハトの巣箱)を動詞で使うとどういう意味になるでしょうか?

 

②車のバックミラーは英語で何でしょうか?

 

③「reckon with」と「reckon without」の意味はそれぞれ何でしょうか?

 

記事の背景

米国でアジア系アメリカ人の占める割合は5.4%である一方、映画の主演俳優に占める割合は1.4%に過ぎません(2014年)。また、アジア系の俳優は、変な訛りを求められたり、自分の経験を反映した演技をさせてもらかったりすることが多いと言います。しかし、この流れは、主要な役を全てアジア系アメリカ人が演じた「クレイジー・リッチ(Crazy Rich Asians)」が2018年に公開されて、大きな成功を納めたことによって変わりました。

同映画で注目を浴びた元ラッパーの女優オークワフィナは言います。「自分を代表してくれるものがあるということがどれほど重要かは、それを見て、これまでの人生でずっとそれが欠けていたのだと気づいた時に初めて理解することができます」

 

 

pigeonhole(ハトの巣箱)を動詞で使うと?

Even as Hollywood began reckoning in recent years with its racist past, the dialogue focused on the divide between black and white representation. Asian actors were still pigeonholed into narrow and reductive parts

ハリウッドが近年になってその人種差別的な過去を考慮に入れ始めた時でさえ、その対話は黒人文化と白人文化の反映の差に集中していました。アジア系の俳優は、依然として狭く単純化してカテゴライズされた役に押し込められていました。

動詞のPigionholeは、「特定のカテゴリーを割り振る」という意味ですが、「狭いカテゴリーに押し込む」というニュアンスで使われることが多いです。ハト用の狭苦しい仕切り巣箱をイメージすると分かりやすいと思います。

 

Reckonの最も単純な意味は、「数を数える、計算する」ですが、reckon withで「~を考慮に入れる」という意味になります。数を数える時に、対象を数に含めるというイメージですね。reckon withoutだと、「~を考慮に入れない(ignore)」という意味になります。

 

 

バックミラーを英語で

Awkwafina and other Asian-American creators hope to push the door open wider and wider, knowing that the former status quo is barely in the rearview mirror.

オークワフィナと他のアジア系アメリカ人のクリエイター達は、以前の状態がまだほとんどバックミラーに映っていないことを知っているので、このドアをより広く押し広げたいと願っています。

The status quoは「現状」という意味です。The state in whichを意味するラテン語ですが、新聞などで頻繁に使われる言葉なのでもはや英語の一部になっています。日本語でも外来語をカタカナにしていっぱい使っているのと同じですね。

 

rearviewはバックミラーのことです。英語でback mirrorと言っても意味が通ので注意が必要です。rear単体だと「背後」という意味で、こちらの単語もよく使います。

 

「the former status quo is barely in the rearview mirror」というのは、以前の状態がまだ全然過去のものになったとは言えないよ、また元に戻ってしまうかもしれないよってことを比喩的に表現している訳ですね。

 

 

オークワフィナとクレイジー・リッチ 

オークワフィナは31歳の元ラッパーで、中国人と韓国人の両方の血筋を引くニューヨーク生まれのアメリカ人女優です。Awkwafinaという名前は、「Awkward(ぎこちない、気まずい)」と「fine(洗練された)」という矛盾するニュアンスの単語を組み合わせて作られています。私などは、それだけで面白そうな人だなと思わされてしまいます。

クレイジー・リッチはNetflixで私も見てみました。Rom-comという枠組みの中でやっているので最後は単純なハッピーエンドですが、家族を第一に考える中国人と個人の幸福を大切にする中国系アメリカ人の分断が描かれていて、移民の経験がリアルに反映されているなあと感じました。

アジア系アメリカ人というのはアメリカでもマイノリティですが、ルーツとなる国に帰ってもマイノリティなので、私だったらかなり心細く感じるだろうなと思います。

オークワフィナは主演ではないのですが、最初から最後まで味のある演技を見せてくれました。お金持ちの話ばかりが鼻につく中で、非常に親しみやすいというか全く気取る様子の無い独特の雰囲気があり、もっと彼女の演技を見てみたいと思わされました。

冒頭にも書いたオークワフィナの言葉を、原文付きでもう一度引用します。

You don’t understand how important representation is until you see it and realize you’ve been missing it your whole life.

自分を代表してくれるものがあるということがどれほど重要かは、それを見て、これまでの人生でずっとそれが欠けていたのだと気づいた時に初めて理解することができます

こういうことを考える人だから、きっと自分の経験を反映したリアルな演技をしていると思うんですよね。

オークワフィナが主演しているというThe Farewell(2019/07/12 公開)も、日本で見られるようになったら絶対に見たいと思います。

 

ステート・フェアの食事とその禁断の魅力(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号のステート・フェアに関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

この記事を読むと以下のことが分かるようになります。

 

問題

①「彼は真面目くさった顔で面白いことを言った」を2語で英訳すると?

 

②「それは筆舌に尽くしがたい」を3語で英訳すると?

 

③ Fair enoughの意味は何でしょうか?

 

 

記事の背景

米国の各州で毎年行われるステート・フェアは、もともと土地の農産物・畜産物の品評会として19世紀にスタートしました。

過去には陰で違法薬物の取引が行われたり、いかがわしい見世物が行われたりするなど、少し危険な匂いのするイベントでしたが、現在のステート・フェアで最も背徳的で人気を集めるものは、ビール揚げ、マッシュポテトの串揚げ、バターボール揚げといった奇抜で革新的なカロリー過多の食べ物の数々です。

 

 

筆舌に尽くしがたい

「あまりにも普通でなく言葉で表現できない」ということを、たった3語の英語で言えます。以下の抜粋を見て見ましょう。

Chicken-fried bacon. Hot-beef sundae. Cookie fries. Deep-fried butter balls. Python kebabs. Deep-fried mashed potatoes on a stick. Fried beer.

To say it beggars description is to tell a lie. The name alone can do that work.

チキンフライドベーコン、ホットビーフサンデー、クッキーフライ、バターボール揚げ、大蛇ケバブ、マッシュポテトの串揚げ、揚げビール。

筆舌に尽くしがたいと言えば嘘になるだろう。名前自体は確かに機能している。

名詞のbeggarは「乞食、物乞い」の意味ですが、ここでは動詞で「使い尽くして足りなくなる」という意味で使っています。なので、It beggars descriptionで、描写を使い尽くす、つまり、言葉では表現できないという意味になります。この表現を最初に使ったのはシェイクスピアだと言われています。

バリエーションとして、It beggars belief(あまりにも普通ではなく、とても信用できない)というのもあります。

 

 

Fair enough

海外ドラマで2人の人物が色々と言いあった後に一方が弁解をして、弁解を聞いた相手が「Fair enough」と言って場が収まるようなシーンを見たことがないでしょうか? その意味について、以下の文章を使って学びましょう。

Fair enough: fired beer requires elaboration. Crowned “most creative” food for the state fair of Texas in 2010, fried beer sloshes inside a “pocket” that resembles a ravioli.

揚げビールには精巧な仕掛けが必要・・・まあいいでしょう。2010年のテキサスのステート・フェアで「最もクリエイティブな」一品との称号を授けられた揚げビールは、ラビオリのように「ポケット」の中で液体がポチャポチャと音を立てます。

Fair enoughは場面によってニュアンスが変わりますが、「(直ちには同意できないような事柄について)あなたの言っていることに私は納得しますよ」という意思を伝える言葉です。日本語で言うと、「まあいいでしょう」「そうかもしれませんね」「なるほどね」といった感じでしょうか。

ここでは、揚げビールという奇妙奇天烈な料理について、発明者が「これを実現するには精巧な仕掛けが必要なんですよ、1種のアートなんですよ」と反論することを想定して、「まあいいでしょう」と筆者が一人芝居のように納得を示している様子を、Fair enoughで表現している訳です。普通は会話で使う表現をうまく文章に取り入れているところが面白いですね。

 

ちなみに、揚げビールの食感は「ぐにょシュワ~」って感じらしいです。興味を持たれた方のため、その作り方を説明したyoutubeの動画を貼っておきます。

 

 

彼は真面目くさった顔で面白いことを言った

 「彼は真面目くさった顔で面白いことを言った」は、「He + 動詞 1語」で表現できていまいます。その単語について以下の抜粋で学びましょう。

The loneliest stand at my last state fair offered “fruit on a stick.”

A passerby read the sign aloud to his companion, paused and, in a deadpan that was itself delicious, asked: “Do you remember fruit?”

私が最後に行ったステート・フェアで最も閑散としていた売り場では、棒付きのフルーツを提供していた。1人の通りすがりの人が、連れの人に看板を読み上げて、少し考えた様子で止まったあと、神妙な顔で(そこが面白いのだが)尋ねた。「フルーツって何だっけ?」

deadpanは名詞で「表情の無い顔、真面目な顔」、形容詞で「真面目くさった、無関心ぶった」、動詞で「真面目くさった顔で面白いことを言う」という意味になります。

なので、「彼は真面目くさった顔で面白いことを言った」は、「He deadpanned.」の2語で表現できます。(上の抜粋では名詞として使っていますが、少し説明的な文章で同じことを表現しています。)

panは日本語でもフライパンと言うように平鍋を意味する名詞ですが、スラングでは顔を意味します。dead(生気の無い)+ pan(顔)でdeadpan(表情のない顔)、そのままですね。

 

もう一つ注目したい単語はdeliciousです。

「たいへん風味のよい」という意味のdeliciousですが、(ユーモアなどが)非常に面白いということを表現する時にも使います。Deliciousの語源はラテン語deliciae(喜び)で、英語ではdelightに相当します。なので、美味しいという意味でdeliciousを使う場合も、それは主観的な喜びの感想であって、客観的に味を述べたい場合には「It tastes good」と言います。(形容詞であれば tasty か good-tasting) 

 

 

おわりに

揚げバターボールなんて聞いただけで胃もたれしそうですね。

ちなみに、米国の成人の平均体重は81.9kg(世界3位)だそうです。(日本は59.0kgで137位。wikipedia調べ)。 ステート・フェアの超高カロリーな食べ物の数々は共産主義者の陰謀だと言う政治家もいるそうですが、きっと単に面白くてやっているだけでしょうね(笑)。

インスタグラムの新しい取り組み ― AIを使ってオンラインいじめを無くす ―(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号のインスタグラムに関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

この記事を読むと以下のことが分かるようになります。

 

問題

①動詞のtrumpの意味は?

<ヒント>名詞のtrumpは、切り札、最後の手段という意味です。(日本語でいうトランプの意味はありません)

 

②rite of passageの意味は何でしょうか?

<ヒント>riteは儀礼・儀式です。

 

③「It’s on us to~」の意味は何でしょうか?

<ヒント>「私のおごりです」を意味するIt’s on meは、「It’s on me to pay」の省略です。

 

 

記事の背景

 インスタグラムは若いユーザーが多いこともあって「オンラインいじめ」が多発していることから、2018年にトップに就任したアダム・モセリは、この問題への取り組みを最優先課題と位置付けており、AIを使ってイジメを検出する方法を模索し始めています。

いじめは、文脈や両者の関係性によっていじめに該当するかどうかが変わること、いじめの定義が人によって違うことから、AIでフィルターにかけることは非常にハイレベルな技術が必要になるそうです。画像からAIがイジメを発見することは、コメント欄からの発見よりもさらに難しいようで、現状は人とテクノロジーの共同作業になっているとのことです。

 

 

 

動詞のtrump

trumpは切り札、最後の手段という意味です。日本語でいうトランプはcardsまたはplaying cardsと言い、トランプの意味で「trump」と言うと通じませんので注意しましょう。

trumpの語源は、もともとtriumph(勝利)の異形で、昔のカードゲームで勝利を意味する言葉として使われたのが始まりのようです。そこから、勝利をもたらしてくれるもの、つまり切り札という意味で使われるようになったということです。

では、動詞のtrumpはどういう意味でしょうか? 下記の抜粋を見て見ましょう。

He insists nothing trumps the need to keep the platform civil. “We will make decision that mean people use Instagram less,” he tells TIME, “if it keeps people more safe.”

プラットフォームを秩序ある礼儀正しいものとして維持することの必要性より優先するものは何もないと彼(モセリ)は主張します。「もしそれが人の安全を守ることになるのであれば、人々がインスタグラムをより使わなくなることにつながる決定もします」と彼は語ります。

動詞のtrumpは、単純に言えば「~に打ち勝つ」という意味ですが、ニュアンスまで含めて訳すと「~に対し(より良いものとして)優位に立つ」という意味です。トランプで相手よりも良い切り札を出して、そのカードが相手のカードを打ち負かすイメージですね。

オックスフォード米語辞典には以下のような例文が載っています。

If the fetus is human life, that trumps any argument about the freedom of the mother. (もし胎児が人間であるとするならば、それは母親の自由に関するいかなる主張をも上回る)

動詞のtrumpは、beatやoverrideに置き換えることは可能だと思いますが、意味の幅が狭いtrumpの方がニュアンスをより正確に伝えられると思います。

 

 

failの多様な意味

 モセリは続けて、以下のようなことも言っています。

If Instagram fails to curb it, he will not only be failing users but also failing the business.

もしインスタグラムがそれ(いじめ)を抑止することを怠るなら、自分はユーザーを失望させるだけでなく、事業を壊してしまうことになる。

最初のfailは「怠る(neglect)」の意味、2つ目のfailは「裏切る、失望させる、見捨てる」などの意味、3つ目のfailは「壊す」という意味です。色んなことを表現できる便利な単語ですね。 

 

 

rite of passage

The pressure to take bullying seriously has increased as scrutiny of tech companies has amped up, but also as research has shown it’s not just some inconsequential rite of passage.

ハイテク企業への批判的な精査が盛んになるにつれ、さらにはイジメが単なる重要性の低い通過儀礼ではないことが研究によって示されるにつれ、イジメを真剣にとらえなければならないという圧力は増えてきています。

通過儀礼って、なんだか意味の分かりにくい日本語ですが、誕生・入学・成人・結婚のような人生の節目で行われる儀礼のことですね。なぜ日本語として分かりにくいのかというと、フランス語のrite de passage(英:rite of passage)を直訳して作った単語だからです。もともとはフランスの民俗学者アルノルト・ファン・ヘネップが考えた造語で、本のタイトルでもあるようです。

 

ソーシャルメディアに没頭するような年代の子供がオンラインでいじめに合うと、居場所が完全に無くなってしまうような感覚に襲われるようで、自傷や自殺につながるケースも少なくありません。「子供にとっていじめは通過儀礼のようなもの」という言葉で済ますことは到底できません。

 

 

It’s on us to…

It’s on meは「私のおごりです」の意味でよく使われますが、そのあとに不定詞が続く場合はどういう意味になるでしょうか?

下の抜粋を見て見ましょう。これもアダム・モセリの言葉です。

Technology isn’t inherently good or bad in the first place. It just is. And social media, as a type of technology, is often an amplifier.

It’s on us to make sure we’re amplifying the good and not amplifying the bad.

テクノロジーは生まれた時から本質的に良いものであったり、悪いものであったりすることはありません。テクノロジーはテクノロジーです。テクノロジーの1つとして、ソーシャルメディアは多くの場合、拡声機です。良いものを拡声して、悪いものを拡声しないようにすることは私達の責任です。

It’s on us to…は、「~は私達の責任です」という意味です。「私のおごりです」という意味のIt’s on meも、「It’s on me to pay」を省略して言っているだけですね。

大学のキャンパスで起きる性的暴行について認知を広めることを1つの目標とする「It’s on us」という社会運動が2014年に生まれましたが、これは「It’s on us to stop sexual assault (性的暴行を無くすことは私達の責任です)」という意味です。

 

 

おわりに

つたない記事を最後までお読みいただきありがとうございます。

一つ一つの単語やフレーズを由来にまでフカボリすると非常に記憶に残りやすいと思いますので、よければ勉強方法の1つとしてご参考になさってください。

FOXCONNの会長テリー・ゴウが台湾総統選に出馬の意向(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号の台湾総統選に関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

この記事を読むと以下のことが分かるようになります。

問題

① a crisp sheet of paperとはどういう意味でしょう?

<ヒント>a sheet of paperで「一枚の紙」なので、crispの意味が問題です。

 

②pull off a dealとはどういう意味でしょう?

 

③ 次の英文はどういう意味でしょう?

Police officers were primed to easily recognize and arrest the wanted person. 

<ヒント>動詞のprimeの意味がポイントです。 

 

 

記事の背景

中国と米国の2大大国が貿易戦争を過熱させる中で、両国のトップと付き合いのあるFOXCONNの会長テリー・ゴウが、自分が総統になることで台湾は両国の間を取り持つサプライチェーンになって大きな利益を上げることができると話しています。

FOXCONNはパソコンやスマートフォンのパーツを生産する企業グループですが、長時間労働、過労死、児童労働などが理由で米国で不買運動が起きたこともあるなど、悪いイメージも根強くあります。また、中国に接近することは危険だと考える台湾人は非常に多く、テリー・ゴウの提案が台湾で受け入れられるかは未知数です。

 

 

動詞のprimeの意味

アマゾンプライム、あるいはプライムミニスター(総理大臣)など馴染みのある単語ですが、動詞だとどういう意味になるでしょう?

下の記事からの抜粋を見て見ましょう。テリー・ゴウが大統領出馬に関するテレビのインタビューを受ける時、いつも秘書が足元にかがんでいるのですが、その秘書が何をやっているのかを説明した文章です。

If he strays off message, they're primed to steer the presidential contender back on course by giving his pant legs a quick tug.

もし総統候補(テリーゴウ)がメッセージから脱線した場合には、秘書たちは彼のズボンの裾を素早く引っ張ることで話題を元に戻すように誘導することを事前に仕込まれています。

動詞のprimeの意味は、誰かに事前に情報を与えておいて、ある状況・ある業務の準備をさせるという意味です。

たとえば以下のような文章に使うことができます。

Police officers were primed to easily recognize and arrest the wanted person.

(警察官はその指名手配犯をすぐに認識して逮捕できるように事前に情報が与えられていた)

 では、なぜprimeに「準備する」というニュアンスが含まれるのでしょうか? 

 primeの本来の意味はFirst (第一の)ですが、そこから「何よりも第一にやること」という意味が出てきて、準備するという意味で使われるようになったのだと思われます。

 

 

 a crisp sheet of paper

チキンクリスプのクリスプは、カリカリという意味ですよね。

ではcrisp sheet of paperはカリカリの紙でしょうか?

カリカリという意味は、crispという単語の音のイメージから来ています。なので、似たような音をcrispから連想できないでしょうか? 紙を表現するのに使えそうな音です。

He sketches the plan on a crisp sheet of paper.

彼は真っ新の紙に新しい計画を描いている。

パリパリの真っ新な紙ということですね。折れ目の無いというニュアンスです。

新しい紙と言う時に、是非new paperの代わりに使ってみてください。

 

 

Pull off

It's also not clear how Gou as President could pull off a deal with China.

ゴウがどうやって総統として中国との取引を見事成功させることができるのかも不明確です。

pull offは(見事)成功させるの意味です。pullは引っ張るという意味なので、pull offで何かを勢いよく引き抜くイメージですね。succeedよりも、勢いよく見事に成功するといった感じです。

ただし、フォーマルな表現ではないので堅い文章を書くときには使わないようにしましょう。

 

regardとperceiveの違い

regard~asもperceive~asも、「~とみなす、~と考える」と日本語に訳すことができますが、ニュアンスは違います。(ほぼ同じ意味で使う場合もあるとは思いますが)

以下の記事の抜粋を見て見ましょう。

The controversial extradition bill that provoked unrest in semiautonomous Hong Kong has been perceived by many Taiwanese as a warning against getting too close to the mainland, boosting Tsai in the polls.

自治的な香港で抗議を呼び起こした賛否両論の容疑者引き渡し条例は、多くの台湾人に、中国本土へ接近しすぎることの危険の警告として受け取られ世論調査蔡英文(現職)の人気を加速させています。

perceiveは、「認識する、理解する、解釈する」といった意味を持ちますが、特に「視覚的に認識」をする場合に好んで使われる単語です。

perceive ~ asは、特定の見方で何かを解釈するという意味です。上記の「視覚的に」というニュアンスがつきまとうので、あまり深く考えた末の解釈ではなく、素直に受け取る、素直に自然に解釈をしている場合に使われる場合が多いと思います。

一方で、regard ~ asあるいはconsider~asの方は、しっかり考えて評価し結論を出しているイメージがあります。

上記の抜粋記事でも、香港で中国寄りの行政長官(キャリーラム)を選んだ結果、中国本土への容疑者引き渡し条例が通されそうになったという事件を、台湾の人が中国への接近の危険性として受け止めるというのは素直な受け取り方ですので、ここではperceiveという単語がしっくりきます。

私は仕事柄、日本人の書く英語をよく目にするのですが、日本人はregard~asやconsider~asを多用する傾向にある気がします。単語の選択肢を増やすことで、より文脈に合った自然な英語を書けるようになるのではないかと思い、この文章をピックアップしてみました。

 

 

おわりに

1つ1つ の英単語のニュアンスをつかむには、例文や語源も含めて英英辞書を隅から隅まで読むのが一番の近道だと私は考えています。語源もニュアンスをつかむのに役立つ場合があるので、辞書の一番下まで確認すると思わぬ発見があるかもしれませんよ。

 

 

銃乱射事件の生存者を苦しめ続ける中毒症状(TIME 2019年7月8日号)

いきなりですが英訳問題です。

「長い間、多くの製造業で鉛は第一選択の金属でした。」

みなさんは、これをどのように英訳されますか?

今日はTIME 2019年7月8日号の記事からの紹介です。

 

記事の背景

銃撃を受けた後に弾丸の破片が被害者の体の中に残ることがありますが、このような破片はこれまで人体に害がないと考えられてきました。しかし、弾丸の鉛が血液中に染み出して、血中の鉛濃度が上昇すると倦怠感・頭痛・吐き気・腹痛などの症状が出ることが最近になって知られるようになってきました。医師も一般的な病気の症状と区別することが難しく、見過ごされることが多いのが現状です。

 

 

You're not out of the woods yet

"I was told, 'You're going to be fine in the long term,' and that's not righ," Goddard says. ”It throws you back when you realize you're not out of the woods yet, and this terrible day is not entirely behind you."

「長期的には良くなっていきますよ」と言われましたが、それは正しくありませんでした。ゴダードさんは言います。まだ危機的状況から脱していないのだと気づくとき、それ(弾丸)はあなたを(悲劇が起きたその日へと)後戻りさせます。そして、その日は完全には過去のものとはなりません。

  • out of the woodsは、「(問題は完全には解決していないものの)危険や困難から逃れる」という意味です。薄暗い林を抜ける=ひとまず危険な場所からは抜け出した、というイメージですね。

 

  • throw backには以下のように様々な意味があります。
   ①投げ戻す、投げ返す
   ②後戻りさせる、遅らせる
   ③先祖返りする
   ④(お酒を)一気飲みする
 

 なお、名詞形にする時は"thorw"と"back"をくっつけて"throwback"とします。

 

 

 A version of ...

With roughly 80,500 nonfatl gunshot injuries annually, a vast number of Americans every year experience a version of Goddard's worst day.

年間で約80,500件の致命的でない銃撃による負傷が発生する中で、毎年、非常に多くの米国人がゴダードさんの最悪の日の別バージョンを経験しています。

  •  a version of ~は、「別のバージョンの~」と訳して問題ありません。 "a" は不特定のもの1つを指す冠詞なので、"another"と同じ意味で使われることがよくあります。

 

  • 「With 80,500 nonfatal gunshot injuries (occures) annually, 」は、「with 名詞+動詞, 」の形で後ろの文章全体を修飾しています。付帯状況を表す分詞構文というやつですね。TIMEの記事を読んでいると頻繁に見かける構文です。

 

 

... of choice 

Lead has long been the metal of choice in many industries, including ammunition, because it's common and inexpensive, sys Michael Helms, a firearms historian in Bton Rouge, La.

鉛は長い間、弾丸を含む多くの製造業で第一選択の金属でした。なぜなら、鉛はありふれており、高価でないからです。ルイジアナ州バトンルージュに住む、銃器に関する歴史家のマイケル・ヘルムさんはそう言います。

It's also heavey and dense, Helms says, which helps bullets maintain consisitent trajectories as opposed to those made with copper.

また、鉛は重くて密度が高いので、銅で作った弾丸とは対照的に、ブレの無い弾道を維持 することができるとヘルムさんは言います。

  • 「名詞 of choice」で「第一選択の、極上の、好んで選ばれる」といった意味になります。たとえば以下のように使います。
  • What is the drug of choice for migraine headaches? (片頭痛の第一選択薬は何ですか?)
  • Sparkling water is his drink of choice. (炭酸水は彼が好んで飲む飲料です)

 

  • as opposed toで、「~とは対照的に、~と対立するものとして」の意味です。

 

  • 鉛は主に塗料として多くの製品に使われていましたが、現在は中毒の危険性が十分に認知されて多くの国で規制されていることから、使用量は随分と減ってきているようです。弾丸の鉛が原因で中毒に苦しむ人がいるというのは、銃大国アメリカならではの問題ですね。

 

 

おわりに

「第一選択の薬は~です」は薬剤師にとって必須のフレーズですね。(そういえば私も薬剤師の端くれでした。)

非常に便利な表現なので、応用して使っていきましょう!

お読みいただきありがとうございました。

 

 

 

お天気戦争。天気予報は誰のもの?(TIME 2019/07/08号)

記事の背景

ビックデータの活用により天気予報はどんどん正確なものになってきていますが、将来的には正確な天気予報を有料で提供するビジネスが成長すると見込んで、近年になって次々と関連するスタートアップ企業が誕生してきています。

今後、民間企業がデータを独占していった場合、全世界の機関がデータを持ち寄って天気を予測する現在の協力体制は無くなってしまい、無料の天気予報は不正確なものになってしまうかもしれません。

 

 

we shrug off with an emoji

Today's weather forecast is a wonder we treat as a banality, a triupmph of ingenuity and diplomacy we shrug off with an emoji.

現代の天気予報は、私たちが極めて平凡なものとして取り扱っている奇跡であり、絵文字1つで片づけてしまっている精巧な仕組みと外交の勝利なのです。

  • shrugは「肩をすくめる」という意味の動詞で、shrug off ~だと「~を軽視する、見くびる」という意味になります。

 

  • banality(名詞)、あるいは元の形であるbanal(形容詞)は、「単純明快で退屈なほどにオリジナリティーが無い(もの)(so lacking in originality as to be obvious and boring)」という意味で、ordinaryとかcommonよりも平凡度合いが高いものを意味します。なので、ここでは「きわめて平凡なもの」と意訳しました。

 

  • 天気予報というのは他に代わりのない物ですが、無料で簡単に手に入るので、ごく当たり前のありふれたものとして扱ってしまいますよね。でも、実際には世界中の機関・企業が大規模なデータを共有しあって協力することで、ようやく実現できるものなのです。

 

 

We can turn everything into a weather sensor

If everything is sensitive to weather, we can turn everything into a weather sensor.

もし全ての物が天気に敏感なのであれば、私たちは全ての物をセンサーに変えることができます。

turn intoは「~に変える、変わる」ですが、姿かたちを変えて全く別のものになるというニュアンスです。以下の例文が分かりやすいと思います。

 

The prince was turned into a frog by the witch. 

 王子さまは魔女によってカエルに変えられてしまいました。

 

 

Commodity capable of giving them an edge over ...

Each company is banking on potential costomers' seeing their weather observations and forecasts not as a common good but as a commodity, capable of giving them an edge over the freely available government outlooks.

どの会社も、潜在的な顧客が天気に関する観測と予測を、公共のものではなく、自由に利用可能な政府機関の予報よりも優位に立たせてくれる便利で価値のあるものだと見てくれることを当てにしています。  

  • give you an edge (over ~)は「(~に対して)あなたを優位に立たせる」の意味で、商品の強みを説明する時に便利な表現です。have an edgeの形でも使います。イメージは、陣地を取り合う敵同士が境界線(edge)でせめぎ合っていて、一方が境界線を陣取るような感じです。

 

  • bank on~は「~を頼りにする、あてにする」で、rely onとほぼ同じ意味です。なぜbank onがこのような意味になるかと言うと、bank(銀行)の語源がラテン語banca (英語のbenchに相当)であり、bench(席)は権威の象徴として裁判官や議員を意味する単語としても使われてきたことと関係するようです。つまり、昔の英語ではbankに「信頼できるもの」というニュアンスがあったということです。

 

  • 天候や気温によって売り上げや来客数が左右されるビジネスは多いですから、正確な予測ができれば販売数や人員を調整して利益を拡大することができるのでしょうね。

 

 

What remains to be seen is ...

What remains to be seen is if they will further improve the forecast for everyone, or create a two-tiered system of those who can pay for better predictions and those who cannot.

万人のための天気予報がさらに改良されていくのか、それともより良い予測のためにお金を出せる人と出せない人の2階層のシステムが作られていくのかは、現時点でまだ分かりません。

remain to be seenの最も基本的な使い方は「It remains to be seen that ~(~はまだ分からない)」ですが、thatをifやwhoやwhereに変えて使うことができます。たとえば、

It remains to be seen who will win the election(誰がその選挙に勝つかはまだ分からない)

という風に使います。

 

 

Then you find yourself in a scenario where ...

Then you find yourself in a scenario where the best forecast on the planet is actually for purchase, and you're separating the haves and have-nots when it comes to life and property.

そしてあなたは、いつの間にか最良の天気予報は実はお金を払って支払うものなのだというシナリオが現実のものになっていることに気づき、生命と財産ということになると持つ者と持たざる者は別なのだと区別し始めるのです。

  • 「find oneself in ~(状況や場所など)」は「気が付けば(知らないうちに)~になっている」という意味になります。

 

  • haves and have-notsは口語表現ですが、rich and poorのようなあからさまな表現より使いやすそうですね。

 

 

The threat today is climatic ― not nulear

The threat today is climatic ― not nulear. But Kennedy saw that we live on a planet carved up by borders yet encased in a borderless atmosphere. We still do.

今日の脅威は、核ではなく気候による脅威です。しかし、ケネディは私たちが国境で切り分けられてはいるが、境界の無い大気に包まれた惑星に生きているのだということに気が付いていました。今も私たちはそのような場所で生きています。

  • Kennedy saw thatの後ろの文は時制の一致が行われず現在形で書かれています。今も変わっていない内容については時制の一致を行わないこともできます。一番最後に「we still do」と書いているように、今も変わっていないということを強調したい場面なので、ここではむしろ時制の一致を行わないのが自然と言えるでしょう。

 

  • 全世界の機関がデータを持ち寄って天気を予測する現在の協力体制は約150年前に始まって、ケネディ大統領のイニシャティブで協力体制がより強固なものとなったそうです。それは、各国が科学の名のもとに協力し合うことで偉大なことをなしとげることができるというメッセージを送ることで、冷戦の対立構造を和らげる狙いがあったようです。

 

 

 おわりに

当たり前だと思っているものは、無くなった時に初めてその大切さに気が付くものなのかもしれません。私も天気予報について考えたことなど一度もなく、まさにshrug off with an emojiしていたので、非常に考えさせられる記事でした。

137年経過、ガウディのサクラダファミリアが完成間近(July 8, 2019)

今日はTIME誌 2019年7月8日号のサクラダファミリアに関する記事から楽しい表現を紹介していきたいと思います。

 

記事の背景

1882年に着工したサクラダファミリアですが、ガウディの死後100年にあたる2026年に完成させることを目標として建築が急ピッチで進められています。バルセロナ市への編入をきっかけとして建築許可のない状態がずっと続いていましたが、委員会が市へ多額の税金と補償金を支払うことに合意したことで、今年7月にようやくこの問題が解決しました。

しかし、まだもう一つ大きな問題が残されています。建築を進めていく予定の場所に混雑した道路や住宅街が広がっており、3000人もの住民が退去を強いられることになるのに、まだ何の調整も行われていないのです。毎月100人以上もの住民が、教会の近くで抗議の行進を行っています。

 

It was like learning a new language

It was like learning a new language―we weren't just learning the vocabulary, but the grammar as well.

新しい言語を学んでいるかのようでした。私達は単に語彙を学んだだけでなく、文法も学んでいたのです。

 

Once we learned to form these shapes and combine them, with each other, it was just a matter of following the rules he had laid out and applying them to new columns, new vaults.

一度これらの形を作って、互いに組み合わせることを学べば、あとは単に彼(ガウディ)が示したルールに従い、そのルールを新しい柱、新しい円天井に当てはめていくだけの問題でした。

現在も24名以上の建築家がサクラダファミリア建設のプロジェクトに関わっているのですが、これはその1人のFauliさんの言葉です。

幾何学を得意とするガウディは、たった2つの形(砂時計のような双曲面とポテチのような放物面)を使ってサクラダファミリア全体を設計しているそうです。上記の表現は、設計がまるで言語のように体系的であるということを上手く伝えていますね。

100年以上のプロジェクトですから、大勢の建築家が建設に関わることになるので、完成する建築物は本当にガウディが意図したとおりものになるのか?という疑問がどうしてもつきまといますが、その疑問への答えが、「建築家はガウディの意思をしっかり読み取り、それを新たな建築部分に適用していっているのですよ」ということなのでしょう。

 

Elephant in the room 

But the agreement doesn't adress the facade-size elephant in the room.

しかし、この合意はその誰もが見て見ぬフリをしている大問題を手当てするものではありません。

elephant in the roomとは、厄介な議論をまきおこしたり社会的なタブーであるため、誰もが見て見ぬふりをする問題を比喩的に表現する言葉です。

もし象が部屋にいたら、それに気が付かずに過ごすというのは不可能ですよね。無理やり見てみぬふりをする可笑しな様子が目に浮かびます。

fasade-sizeというのは、(サクラダファミリア)の正面くらい大きな問題だという意味です。単純にhuge elephantと言えばいいところを、サクラダファミリアくらい大きな象(問題)と表現しているところが面白いですね。

なお、ここで言っている問題というのは、建築予定地に現在も居住している大勢の人達と退去の合意が取れていないという問題です。

 

 like latter-day monoliths

Part of the answer lies at Galera, a sprawling work site 90 minutes north of Barcelona, where twin cranes rise like latter-day monoliths over the hill.

答えの一部はガレラ、2機のクレーンが現代の巨石建造物のように丘の上にそびえ立っている、バルセロナから北へ90分移動した所に広がる作業場にあります。

 "latter-day"は「現代版の~」と言う時に広く使えそうな形容詞ですね。later(léitər)ではなくlatter(lǽtər)なので発音に注意です。

monolithは巨大な一枚岩を意味する言葉ですが、megalith(巨石)という意味で使われることも多いようです。巨石というのはストーンヘンジのような先史時代の巨石文明を指す言葉ですね。monolithsと複数形になっているので、巨石建造物と意訳しました。

monolithとmegalithの意味のオーバーラップはwikipediaMegalithの記事に書かれていました。

 For later periods, the word monolith, with an overlapping meaning, is more likely to be used.

 

おわりに

 TIMEの魅力を少しでもお伝えすることができたでしょうか?

一流の英文に毎日触れることで、英語を日本語と同じくらい自由にクリエイティブに使えるようになる日がいつか来ると思います。

できるだけ毎日更新しますので、どうぞよろしくお願いします。