TIME誌を使ってネイティブ流の英語表現を学ぼう

超一流の記者が書く英文記事からピカリと光る表現をピックアップ。さらに世界が今注目する話題について分かりやすくまとめます。

ハリウッド映画に新たな流れ。アジア系アメリカ人主演の映画が次々と公開(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号のハリウッド映画の新しい兆候に関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

 

クイズ

① pigeonhole(ハトの巣箱)を動詞で使うとどういう意味になるでしょうか?

 

②車のバックミラーは英語で何でしょうか?

 

③「reckon with」と「reckon without」の意味はそれぞれ何でしょうか?

 

記事の背景

米国でアジア系アメリカ人の占める割合は5.4%である一方、映画の主演俳優に占める割合は1.4%に過ぎません(2014年)。また、アジア系の俳優は、変な訛りを求められたり、自分の経験を反映した演技をさせてもらかったりすることが多いと言います。しかし、この流れは、主要な役を全てアジア系アメリカ人が演じた「クレイジー・リッチ(Crazy Rich Asians)」が2018年に公開されて、大きな成功を納めたことによって変わりました。

同映画で注目を浴びた元ラッパーの女優オークワフィナは言います。「自分を代表してくれるものがあるということがどれほど重要かは、それを見て、これまでの人生でずっとそれが欠けていたのだと気づいた時に初めて理解することができます」

 

 

pigeonhole(ハトの巣箱)を動詞で使うと?

Even as Hollywood began reckoning in recent years with its racist past, the dialogue focused on the divide between black and white representation. Asian actors were still pigeonholed into narrow and reductive parts

ハリウッドが近年になってその人種差別的な過去を考慮に入れ始めた時でさえ、その対話は黒人文化と白人文化の反映の差に集中していました。アジア系の俳優は、依然として狭く単純化してカテゴライズされた役に押し込められていました。

動詞のPigionholeは、「特定のカテゴリーを割り振る」という意味ですが、「狭いカテゴリーに押し込む」というニュアンスで使われることが多いです。ハト用の狭苦しい仕切り巣箱をイメージすると分かりやすいと思います。

 

Reckonの最も単純な意味は、「数を数える、計算する」ですが、reckon withで「~を考慮に入れる」という意味になります。数を数える時に、対象を数に含めるというイメージですね。reckon withoutだと、「~を考慮に入れない(ignore)」という意味になります。

 

 

バックミラーを英語で

Awkwafina and other Asian-American creators hope to push the door open wider and wider, knowing that the former status quo is barely in the rearview mirror.

オークワフィナと他のアジア系アメリカ人のクリエイター達は、以前の状態がまだほとんどバックミラーに映っていないことを知っているので、このドアをより広く押し広げたいと願っています。

The status quoは「現状」という意味です。The state in whichを意味するラテン語ですが、新聞などで頻繁に使われる言葉なのでもはや英語の一部になっています。日本語でも外来語をカタカナにしていっぱい使っているのと同じですね。

 

rearviewはバックミラーのことです。英語でback mirrorと言っても意味が通ので注意が必要です。rear単体だと「背後」という意味で、こちらの単語もよく使います。

 

「the former status quo is barely in the rearview mirror」というのは、以前の状態がまだ全然過去のものになったとは言えないよ、また元に戻ってしまうかもしれないよってことを比喩的に表現している訳ですね。

 

 

オークワフィナとクレイジー・リッチ 

オークワフィナは31歳の元ラッパーで、中国人と韓国人の両方の血筋を引くニューヨーク生まれのアメリカ人女優です。Awkwafinaという名前は、「Awkward(ぎこちない、気まずい)」と「fine(洗練された)」という矛盾するニュアンスの単語を組み合わせて作られています。私などは、それだけで面白そうな人だなと思わされてしまいます。

クレイジー・リッチはNetflixで私も見てみました。Rom-comという枠組みの中でやっているので最後は単純なハッピーエンドですが、家族を第一に考える中国人と個人の幸福を大切にする中国系アメリカ人の分断が描かれていて、移民の経験がリアルに反映されているなあと感じました。

アジア系アメリカ人というのはアメリカでもマイノリティですが、ルーツとなる国に帰ってもマイノリティなので、私だったらかなり心細く感じるだろうなと思います。

オークワフィナは主演ではないのですが、最初から最後まで味のある演技を見せてくれました。お金持ちの話ばかりが鼻につく中で、非常に親しみやすいというか全く気取る様子の無い独特の雰囲気があり、もっと彼女の演技を見てみたいと思わされました。

冒頭にも書いたオークワフィナの言葉を、原文付きでもう一度引用します。

You don’t understand how important representation is until you see it and realize you’ve been missing it your whole life.

自分を代表してくれるものがあるということがどれほど重要かは、それを見て、これまでの人生でずっとそれが欠けていたのだと気づいた時に初めて理解することができます

こういうことを考える人だから、きっと自分の経験を反映したリアルな演技をしていると思うんですよね。

オークワフィナが主演しているというThe Farewell(2019/07/12 公開)も、日本で見られるようになったら絶対に見たいと思います。