TIME誌を使ってネイティブ流の英語表現を学ぼう

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インスタグラムの新しい取り組み ― AIを使ってオンラインいじめを無くす ―(TIME 2019年7月22日号)

今日はTIME 2019年7月22日号のインスタグラムに関する記事を使って英語を学んでいきたいと思います。

この記事を読むと以下のことが分かるようになります。

 

問題

①動詞のtrumpの意味は?

<ヒント>名詞のtrumpは、切り札、最後の手段という意味です。(日本語でいうトランプの意味はありません)

 

②rite of passageの意味は何でしょうか?

<ヒント>riteは儀礼・儀式です。

 

③「It’s on us to~」の意味は何でしょうか?

<ヒント>「私のおごりです」を意味するIt’s on meは、「It’s on me to pay」の省略です。

 

 

記事の背景

 インスタグラムは若いユーザーが多いこともあって「オンラインいじめ」が多発していることから、2018年にトップに就任したアダム・モセリは、この問題への取り組みを最優先課題と位置付けており、AIを使ってイジメを検出する方法を模索し始めています。

いじめは、文脈や両者の関係性によっていじめに該当するかどうかが変わること、いじめの定義が人によって違うことから、AIでフィルターにかけることは非常にハイレベルな技術が必要になるそうです。画像からAIがイジメを発見することは、コメント欄からの発見よりもさらに難しいようで、現状は人とテクノロジーの共同作業になっているとのことです。

 

 

 

動詞のtrump

trumpは切り札、最後の手段という意味です。日本語でいうトランプはcardsまたはplaying cardsと言い、トランプの意味で「trump」と言うと通じませんので注意しましょう。

trumpの語源は、もともとtriumph(勝利)の異形で、昔のカードゲームで勝利を意味する言葉として使われたのが始まりのようです。そこから、勝利をもたらしてくれるもの、つまり切り札という意味で使われるようになったということです。

では、動詞のtrumpはどういう意味でしょうか? 下記の抜粋を見て見ましょう。

He insists nothing trumps the need to keep the platform civil. “We will make decision that mean people use Instagram less,” he tells TIME, “if it keeps people more safe.”

プラットフォームを秩序ある礼儀正しいものとして維持することの必要性より優先するものは何もないと彼(モセリ)は主張します。「もしそれが人の安全を守ることになるのであれば、人々がインスタグラムをより使わなくなることにつながる決定もします」と彼は語ります。

動詞のtrumpは、単純に言えば「~に打ち勝つ」という意味ですが、ニュアンスまで含めて訳すと「~に対し(より良いものとして)優位に立つ」という意味です。トランプで相手よりも良い切り札を出して、そのカードが相手のカードを打ち負かすイメージですね。

オックスフォード米語辞典には以下のような例文が載っています。

If the fetus is human life, that trumps any argument about the freedom of the mother. (もし胎児が人間であるとするならば、それは母親の自由に関するいかなる主張をも上回る)

動詞のtrumpは、beatやoverrideに置き換えることは可能だと思いますが、意味の幅が狭いtrumpの方がニュアンスをより正確に伝えられると思います。

 

 

failの多様な意味

 モセリは続けて、以下のようなことも言っています。

If Instagram fails to curb it, he will not only be failing users but also failing the business.

もしインスタグラムがそれ(いじめ)を抑止することを怠るなら、自分はユーザーを失望させるだけでなく、事業を壊してしまうことになる。

最初のfailは「怠る(neglect)」の意味、2つ目のfailは「裏切る、失望させる、見捨てる」などの意味、3つ目のfailは「壊す」という意味です。色んなことを表現できる便利な単語ですね。 

 

 

rite of passage

The pressure to take bullying seriously has increased as scrutiny of tech companies has amped up, but also as research has shown it’s not just some inconsequential rite of passage.

ハイテク企業への批判的な精査が盛んになるにつれ、さらにはイジメが単なる重要性の低い通過儀礼ではないことが研究によって示されるにつれ、イジメを真剣にとらえなければならないという圧力は増えてきています。

通過儀礼って、なんだか意味の分かりにくい日本語ですが、誕生・入学・成人・結婚のような人生の節目で行われる儀礼のことですね。なぜ日本語として分かりにくいのかというと、フランス語のrite de passage(英:rite of passage)を直訳して作った単語だからです。もともとはフランスの民俗学者アルノルト・ファン・ヘネップが考えた造語で、本のタイトルでもあるようです。

 

ソーシャルメディアに没頭するような年代の子供がオンラインでいじめに合うと、居場所が完全に無くなってしまうような感覚に襲われるようで、自傷や自殺につながるケースも少なくありません。「子供にとっていじめは通過儀礼のようなもの」という言葉で済ますことは到底できません。

 

 

It’s on us to…

It’s on meは「私のおごりです」の意味でよく使われますが、そのあとに不定詞が続く場合はどういう意味になるでしょうか?

下の抜粋を見て見ましょう。これもアダム・モセリの言葉です。

Technology isn’t inherently good or bad in the first place. It just is. And social media, as a type of technology, is often an amplifier.

It’s on us to make sure we’re amplifying the good and not amplifying the bad.

テクノロジーは生まれた時から本質的に良いものであったり、悪いものであったりすることはありません。テクノロジーはテクノロジーです。テクノロジーの1つとして、ソーシャルメディアは多くの場合、拡声機です。良いものを拡声して、悪いものを拡声しないようにすることは私達の責任です。

It’s on us to…は、「~は私達の責任です」という意味です。「私のおごりです」という意味のIt’s on meも、「It’s on me to pay」を省略して言っているだけですね。

大学のキャンパスで起きる性的暴行について認知を広めることを1つの目標とする「It’s on us」という社会運動が2014年に生まれましたが、これは「It’s on us to stop sexual assault (性的暴行を無くすことは私達の責任です)」という意味です。

 

 

おわりに

つたない記事を最後までお読みいただきありがとうございます。

一つ一つの単語やフレーズを由来にまでフカボリすると非常に記憶に残りやすいと思いますので、よければ勉強方法の1つとしてご参考になさってください。