お天気戦争。天気予報は誰のもの?(TIME 2019/07/08号)
記事の背景
ビックデータの活用により天気予報はどんどん正確なものになってきていますが、将来的には正確な天気予報を有料で提供するビジネスが成長すると見込んで、近年になって次々と関連するスタートアップ企業が誕生してきています。
今後、民間企業がデータを独占していった場合、全世界の機関がデータを持ち寄って天気を予測する現在の協力体制は無くなってしまい、無料の天気予報は不正確なものになってしまうかもしれません。
we shrug off with an emoji
Today's weather forecast is a wonder we treat as a banality, a triupmph of ingenuity and diplomacy we shrug off with an emoji.
現代の天気予報は、私たちが極めて平凡なものとして取り扱っている奇跡であり、絵文字1つで片づけてしまっている精巧な仕組みと外交の勝利なのです。
- shrugは「肩をすくめる」という意味の動詞で、shrug off ~だと「~を軽視する、見くびる」という意味になります。
- banality(名詞)、あるいは元の形であるbanal(形容詞)は、「単純明快で退屈なほどにオリジナリティーが無い(もの)(so lacking in originality as to be obvious and boring)」という意味で、ordinaryとかcommonよりも平凡度合いが高いものを意味します。なので、ここでは「きわめて平凡なもの」と意訳しました。
- 天気予報というのは他に代わりのない物ですが、無料で簡単に手に入るので、ごく当たり前のありふれたものとして扱ってしまいますよね。でも、実際には世界中の機関・企業が大規模なデータを共有しあって協力することで、ようやく実現できるものなのです。
We can turn everything into a weather sensor
If everything is sensitive to weather, we can turn everything into a weather sensor.
もし全ての物が天気に敏感なのであれば、私たちは全ての物をセンサーに変えることができます。
turn intoは「~に変える、変わる」ですが、姿かたちを変えて全く別のものになるというニュアンスです。以下の例文が分かりやすいと思います。
The prince was turned into a frog by the witch.
王子さまは魔女によってカエルに変えられてしまいました。
Commodity capable of giving them an edge over ...
Each company is banking on potential costomers' seeing their weather observations and forecasts not as a common good but as a commodity, capable of giving them an edge over the freely available government outlooks.
どの会社も、潜在的な顧客が天気に関する観測と予測を、公共のものではなく、自由に利用可能な政府機関の予報よりも優位に立たせてくれる便利で価値のあるものだと見てくれることを当てにしています。
- give you an edge (over ~)は「(~に対して)あなたを優位に立たせる」の意味で、商品の強みを説明する時に便利な表現です。have an edgeの形でも使います。イメージは、陣地を取り合う敵同士が境界線(edge)でせめぎ合っていて、一方が境界線を陣取るような感じです。
- bank on~は「~を頼りにする、あてにする」で、rely onとほぼ同じ意味です。なぜbank onがこのような意味になるかと言うと、bank(銀行)の語源がラテン語のbanca (英語のbenchに相当)であり、bench(席)は権威の象徴として裁判官や議員を意味する単語としても使われてきたことと関係するようです。つまり、昔の英語ではbankに「信頼できるもの」というニュアンスがあったということです。
- 天候や気温によって売り上げや来客数が左右されるビジネスは多いですから、正確な予測ができれば販売数や人員を調整して利益を拡大することができるのでしょうね。
What remains to be seen is ...
What remains to be seen is if they will further improve the forecast for everyone, or create a two-tiered system of those who can pay for better predictions and those who cannot.
万人のための天気予報がさらに改良されていくのか、それともより良い予測のためにお金を出せる人と出せない人の2階層のシステムが作られていくのかは、現時点でまだ分かりません。
remain to be seenの最も基本的な使い方は「It remains to be seen that ~(~はまだ分からない)」ですが、thatをifやwhoやwhereに変えて使うことができます。たとえば、
It remains to be seen who will win the election(誰がその選挙に勝つかはまだ分からない)
という風に使います。
Then you find yourself in a scenario where ...
Then you find yourself in a scenario where the best forecast on the planet is actually for purchase, and you're separating the haves and have-nots when it comes to life and property.
そしてあなたは、いつの間にか最良の天気予報は実はお金を払って支払うものなのだというシナリオが現実のものになっていることに気づき、生命と財産ということになると持つ者と持たざる者は別なのだと区別し始めるのです。
- 「find oneself in ~(状況や場所など)」は「気が付けば(知らないうちに)~になっている」という意味になります。
- haves and have-notsは口語表現ですが、rich and poorのようなあからさまな表現より使いやすそうですね。
The threat today is climatic ― not nulear
The threat today is climatic ― not nulear. But Kennedy saw that we live on a planet carved up by borders yet encased in a borderless atmosphere. We still do.
今日の脅威は、核ではなく気候による脅威です。しかし、ケネディは私たちが国境で切り分けられてはいるが、境界の無い大気に包まれた惑星に生きているのだということに気が付いていました。今も私たちはそのような場所で生きています。
- Kennedy saw thatの後ろの文は時制の一致が行われず現在形で書かれています。今も変わっていない内容については時制の一致を行わないこともできます。一番最後に「we still do」と書いているように、今も変わっていないということを強調したい場面なので、ここではむしろ時制の一致を行わないのが自然と言えるでしょう。
- 全世界の機関がデータを持ち寄って天気を予測する現在の協力体制は約150年前に始まって、ケネディ大統領のイニシャティブで協力体制がより強固なものとなったそうです。それは、各国が科学の名のもとに協力し合うことで偉大なことをなしとげることができるというメッセージを送ることで、冷戦の対立構造を和らげる狙いがあったようです。
おわりに
当たり前だと思っているものは、無くなった時に初めてその大切さに気が付くものなのかもしれません。私も天気予報について考えたことなど一度もなく、まさにshrug off with an emojiしていたので、非常に考えさせられる記事でした。